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KodomoQuest「獣の奏者は哲学入魂ファンタジー」の巻

『獣の奏者』の書評・・言い換えれば「読書感想文」?

連れ合いはそれが仕事のひとつになっているが、あたしの場合には単に好きで読んでいるわけだから楽しく書けるはずだが・・なかなか難しい。。。

『この物語は、あるひとつの国の成り立ちに昔からの言い伝え(戒律であり禁忌)が絡んで進行していく話。物語の核となってるのは1巻2巻では「同じ国の中での2つの民の対立」、それが3巻4巻では近隣の国々からの「侵略や戦争」に発展していく。そういう筋立てのなかに「闘蛇」と呼ばれる獣(トカゲorワニのイメージ近し)と「王獣」と呼ばれる獣(オオカミのような風貌のフクロウのイメージ)の2種の獣と深く関わることになるひとりの少女の成長の物語でもある』なんちゃって。ここまでのはあらすじ。

読んでいて感心したのは、物語の背景となりうる世界の様々な要素である「政治・経済・商業・教育・自然・動物、そして人間たち」がじつにていねいに設定され描かれているところ。作者の上橋菜穂子氏が文化人類学者(博士論文はアボリジニについて)だということが確かな下地としてあるのだと思う。加えて、この本の担当編集者が助産師ということも異色であり、それが物語の中での子どもとの関わりや子育ての様子にきめ細やかな表現に影響を与えているのではないか?と感じている。

「獣の奏者」の成功は、読者の対象を絞らなかったこと(子ども向けとか少年少女向けとか)だと思う。アニメのほうは(作者もあとがきで述べているとおりアルプスの少女等の名作アニメを想定したという)原作より少々子どもにも分かりやすい配慮にはなっているが、ヒロインの母親の残酷な処刑シーンなど、避けずにきちんとアニメで表現されており、その潔さ(子どもに媚びないところ)に好感がもてる。1巻2巻を憑かれたようにわずか4ヶ月で書き上げたということで、作者が思うまま書きたいように書いたのだろうし、読者のことなぞ考えることもなかったのかもしれない。まあ、児童文学者と呼ばれるひとたちはメッセージの届け先のことに配慮せずにはおられない人々ではなかったか?と思ったりもするが・・

人間というのはいつの世もどこの国であっても愚かでどうしょうもないものだな、と現実に置き換えて呆れる一方で、じたばたしつつ生きていくことをよしとしたい気持ちに最後になります。そういう物語です。

「おい、真面目すぎてオモロないぞ!」とエカキより突っ込みが入った・・ちゃんちゃん〜
by nabetsuma | 2010-01-16 21:32 | KodomoQuest