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BookQuest『北欧はミステリの宝庫!?』

物心ついた頃からミステリにどっぷりだった。最初はリュパンやホームズ(小学生低学年)。その後クイーンやクリスティとミステリの王道を歩んで来た。ヨーロッパから帰国ししばらくたったころ、知り合いに「面白いから読んでみて」とすすめられたのが、刑事マルティンベックシリーズだった。スウェーデンの警察小説。

著者はマイ・シューヴァルとペール・ヴァールーの夫婦共著。聞いたことないなあ、と思った方も、映画化された「マシンガン・パニック」は観たことがあるかも?(似たような題名で、同じく主演がウォルター・マッソーのサブウェイパニックとは違う映画)

さて、当時はスウェーデンって警察国家(小説「唾棄すべき男」がその代表)で犯罪の多い大変な国なんだなあって、福祉国家としてのイメージがまったく変わってしまった。それから約30年経ち、今度は違う友だちから「面白いミステリがあるの。読んでみて」とすすめられたのが、刑事ヴァランダーシリーズ。同じくスウェーデンが舞台の警察小説である。

作者のヘニング・マンケルは、別件で近年その名を世界中のニュースに登場させた。2010年5月31日イスラエル軍により境界封鎖されたパレスチナへ食糧や医療品などの救援物資を運ぼうとした船が、イスラエル軍に攻撃され死者を出し拿捕されるという事件が起きた。その船にマンケルが乗っており、イスラエルから国外追放されベルリンで記者会見しその無法を世界に訴えたという。

インタビューを受けるヘニング・マンケル氏。こちら=

まあ作者のことはこのへんにして、日本における刑事ヴァランダーシリーズは「殺人者の顔」からスタートする。
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読み終えその友人に「あまり面白くなかった。北欧ならすでに読んでいたラーシュ・ケプレルの催眠のほうが面白かった」と伝えたら、「もう少し我慢して何冊か読んでみて」と強くプッシュされた。

そこで、ネット書店で在庫がある順に読んで行ったら、スウェーデンの社会状況を背景になかなか味わいのあるミステリだということが判明した。そういう意味では、初回の「殺人者の顔」のヴァランダー刑事がよくないのよ! だって別居した妻に未練タラタラだし、何を勘違いしたのか出会ったばかりの美人検察官に言い寄るし「これじゃあ中年のさえない刑事物語かよ」という情けない雰囲気満載で、小説の伏線に少々うんざりしたのが原因。

ただ、主人公とその父親との掛け合いは面白い。父親の職業は・・絵描き! しかも生涯同じモチーフ(ライチョウ)の絵ばかり描いているときたもんだ、はは。殺人事件をかかえ大忙しのヴァランダーの職場に頻繁に電話をかけてくるところもなかなかの根性。電話で呼び出され、父親を訪ねていくときまって喧嘩になる。父親から「なぜおまえはいつもいつも忙しいんだ!」から始まり次から次へと質問が繰り出してきてうんざりした様子のヴァランダー刑事はこう語る。

『職業上、何百回となく尋問をしてきたが、父親から向けられる質問の執拗さにはかなわなかった』。たいへんだよね、いずこの国の息子むすめも〜

是非読んでみようと思った方々、5作目、CWAゴールドダガー賞受賞作「目くらましの道」あたりまでは我慢してちょーー
by nabetsuma | 2013-03-12 19:29 | BookQuest